2012年4月6日金曜日

なつかしい鞄1

昨年の秋、懐かしいお客様が、懐かしい鞄を持って来店なさった。
黄色いバッファロー革の口枠の鞄(FL46型)だ。
私がFugeeで働きはじめてまだ年数も浅い頃たずさわった鞄である。
96年の新宿紀伊国屋ギャラリーで行われたFugeeの個展に出品する為につくり、その後
渋谷の店に展示してあったものがお客様の目にとまり、お買い上げいただいたのが、
97年か98年のことではなかったかと思う。
十数年が過ぎて、明るい黄色は飴色になり、ぷりっと張っていた胴には柔らかい
ドレープが出ていた。大事に使い込まれ、手入れも行き届いたその鞄は、とても
やさしい顔をしていた。

長年の使用に耐えかねて、手カンのすり減りが気になってきたとのことで、
新しいものに取り替えられないかというご依頼だった。
当時はまだオリジナルの金具がなく、手カンも、市販の、少しアソビの気になるものを
つかっていた。今では、そうはさせまいとする現時点でベストと思われる工夫を
するようになったが、接触している金属どうしの摩耗はいったんはじまるとどんどん
進行してしまうので厄介なのだ。

                             金原