2012年8月12日日曜日

大きな口枠のボストンバッグ

鞄の口元に入っているフレームを口枠というが、これはまだファスナーが発明される以前の、しっかりと口元を開け閉めする為に作り出された先人の知恵である。
なにしろ口枠は金属であり、どうしても薄く柔らか過ぎる革の鞄には向かない。
置いた途端金属の重みで口元が陥没してしまう。
しかし、ハードな革で作る口枠鞄の雰囲気はまた格別なものがある。
特に、硬い鞄の両肩が内側に丸め込まれ、力強い緊張感が出た様子は、鞄の原点の様な物を感じる。
これはブライドルレザーを使った大きめのボストンバッグだが最も好きな鞄の一つだ。
この形を厚いままのブライドルで作ると形崩れがほとんどない。数年前メンテナンスのため里帰りさせていただいた際に、表面の傷、すり切れはなだめてお渡しした。しかし形崩れは皆無だった。仕立ての方向性が合理的なのだ。ただし難点は重くなること。軽さが重要視される昨今、こういうクラシックな大きな鞄のご注文はめっきり減った。
作り手としては少々さびしい。