2013年10月30日水曜日

漆黒の鞄

最近つくったセミオーダーの FM42型。
二枚の胴体に底を付け、口元に枠を付けて折りたたむ。
厚く張りのある革を強引に折りたたむ。
そして生まれる曲線は緊張感があるのに、なめらかでやさしい。
出来上がりの瞬間は、革のもつ底力に感動し、感謝する。

インナーは、艶をおさえたゴートの黒、通常はファスナーのポケットがつくのだが、
あえて何もなしで、というきっぱりとしたオーダー。
注文主の心意気が反映されたストイックで美しい鞄になった。





2013年10月25日金曜日

わたしの宝物

好きだとか、思いだとかはどうしようもないもので、
子供の時期はとうに過ぎた方が鉄道模型に目を輝かせたりということは
よくあるものですが、私の場合これです。
まだファスナーが出来る以前、鞄を開け閉めするのに人々はいろいろな方法を
考えました。これらがその例です。口枠といいます。
今はもうこんな質感のものはありません。
こういうのが鞄の一番上に付いていたのですから、
しっかりした重い鞄になるのもうなずけます。
折りをみて骨董品を見つけ、それをばらして少しづつ集めたものです。
見て、さわっているだけでドキドキ胸がさわぎます。
これを使ってどういう鞄をどういう革で作ろうか、部品をバラバラに
してみたり、まとめてみたり。
昔の口枠はしっかりした作りなのできちんと仕立てると素晴らしいものになります。
いくつか作っていますが、ひと味もふた味も違うものができます。
ちょっと見るとガラクタですが、わたしの宝物です。



2013年10月20日日曜日

N 様の口枠鞄

どうせ作るならその方に思いを寄せながら作るほうが楽しいし、
出来上がってお渡しする時の嬉しそうなお顔を思うと元気が出ます。
この鞄は形は定番ですが中身はかなり違います。
仕立て上の見えない部分も入れたら全く違うものと言ってもいい。
大きな鞄に書籍をいっぱいにして持ち歩く、あるいは肩からかけて。
どうしても金具は全てスターリングシルバーでとお願いされましたが、
そういう使用状況で素材の柔らかさはとても不利になります。
という訳で、錠前に負荷が掛からないよう練りに練ってある工夫をしました。
先日修理以来があり「ついに来たか」と思い見せて頂くと、
持ち手を止めているネジが緩んで外れただけで他の部分は大丈夫でした。
10年程お使い頂いていますが、大切にして頂いている事がとてもよくわかります。
色が少し抜けてきた所も彼の好みの経年変化で、メンテナンスの際の着色は
あえてしないでほしいというご要望でした。
「今がいい所でこのままの状態であと何年持てるだろうか」と言われていましたが、
はっきり断言はできませんが倍は充分持つと思われます。
つくり手を離れて、長い年月をつかい手とともに過ごした鞄の表情は
ほんとうに個性的で、いとおしいものです。




2013年10月17日木曜日

Real Bespoke展のHP

5月のブログでもお知らせいたしましたが、
来年3月18日〜23日に「Real Bespoke 展  -目に見えない手仕事の累積-」
を開催いたします。この度そのホームページが出来ましたのでお知らせ致します。
作り手が発する、Bespokeの裏も表もご覧頂こうという企画です。
詳細は是非ホームページをご覧下さい。

    http://realbespoke.info/  


2013年10月14日月曜日

山羊革のアタッシェケース製作過程


ご報告が遅れましたが、HPの Monthly Workshopが更新されております。
紺色のゴート(山羊)のアタッシェケースです。
どうぞご覧下さい。
 http://www.fugee.jp/monthly/index.html








2013年10月10日木曜日

秋のおやつ

素晴らしい巨峰をいただいた。枝付きであまりにも美しかったので、
食べる前の姿を残したいとおもいました。
それにしてもここのところ涼しいというより暑いくらいなので、
おいしい旬の恵みを頂きつつ、今ひとつ気分が盛り上がらない今年の秋です。






         


2013年10月7日月曜日

制作前の試行錯誤

これは2回目の試作です。
最初の試作がバラバラになってます。
それが大事なことで、プロポーション、質感、仕立ての詳細ステッチの雰囲気等
いろいろなことを判断する材料になります。
職人二人の大激論になることもあります。これしかないと大合意になる時もあります。
時間はもちろん掛かるのですが、試作の意味はいろいろです。
物によってはみっちり作り込む時も、時によってはボール紙を貼付ける
だけの時もあったりします。
この時はお客様の希望でこれより少し大きなショルダーバッグになりました。