2013年8月31日土曜日

ある夏の日

     黒のボックスカーフ(子牛の革)に型紙をのせて、何度も確認して
     今まさにカットを始めるところです。
     一般にボックスカーフはとてもデリケートで、美しいのですが
     傷もつきやすい革です。高級な革の代名詞のようなもの。
     でも、この革はただデリケートなだけではありません。
     美しく繊細なのは表面の話で、実はこの革の繊維は
     非常に粘り強く柳腰なんです。
     ですからボックスカーフでしっかりした仕立てた鞄は
     経年変化も独特の美しさを放ちます。
     この鞄はどんな表情になって里帰りしてくるのか、楽しみです。






2013年8月27日火曜日

説得力ある存在感 2

ありました。
まさにこれのようです。
coffin(コファン)と言う農具とあります。
これは農夫が鎌を研ぐ為の、今で言うと研磨剤を入れておくもので
腰に下げて運び、地面に差してつかうものだそうで
どうも、しょっちゅう研いでいたみたいです。
その研磨剤がすごい。
シードルに塩、ビネガーに塩、砂と尿を混ぜたもの、マムシの皮と
オトギリ草、エニシダ、などにビネガーを混ぜたものとあります。
色々な物を地方によって使っていたようです。
これらは研磨中の素材の温度を上げない為と腐食させて研ぎやすくする為
かもしれません。
コファンの素材も、牛のツノを煮て柔らかくし、まっすぐにして使用したものや
亜鉛製のものなどもあったようです。木製のものには装飾が彫ってあったり、
Fugeeにあるものはシンプルですが周囲を削って模様にした、
木の古さもあるかも知れませんが存在感のある美しいものです。


ご縁があってFugeeに来たものからほんのすこしだけ垣間見えたヨーロッパの
民具の歴史の一部。興味深い!
























2013年8月24日土曜日

説得力ある存在感

十年ほど前に、ある骨董好きのお客様から、お店にどうぞ、と頂いた
木製の器のようなもの。金属のフックがついて、底の先端がやはり金属でとがっている。
ヨーロッパの民具で、農具を入れて腰につけたり、地面に差して使う物ではないか
ということでした。
以来、Fugeeでは鏡のフレームの端が定位置となり、花器として雰囲気づくりに
一役買ってくれています。ユーモラスなかたちと素朴な味わいはとても魅力的で、
華美ではない植物を生けるとぐっと引き立たたせ、まわりの空気をガラッと
変える力をもっています。

それにしてもこれは具体的にはいったいなんだろう、と言う疑問がどこかにありました。

先日、仕事の合間の休憩中、フランスの刃物の本をペラペラめくっていたフジイが驚きの声をあげたのです。





2013年8月17日土曜日

ずた袋的バッグの製作

ぽったりとふくよかなカーフはマットな黒。
合わせたのは、濃紺のクロコダイル。
そもそも黒い鞄のオーダーだったが、マットなやさしい黒に艶っぽい黒いクロコダイル
は強すぎてしっくりこない。濃紺を合わせてみたら、お互いの色と質感が引き立て合う
のがわかった。色合わせ、素材合わせの妙。こういう発見はちいさな喜び。
そしてなにより、私共を信頼し「自由におまかせ」なオーダーをくださる
お客様の存在に感謝。









2013年8月12日月曜日

ずた袋的バッグの構想

スケッチだけでは出来上がりの雰囲気をイメージしきれない場合があります。
そんなときは実際につかう革を触るのがいちばん。
でも、もちろん貴重な革は無駄には出来ないので、小さな実験はいちばん隅をつかい、
大きさのバランスは革を折り畳んだりしてイメージをふくらます。
やわらかくて、シンプルな鞄ならではの自由なアプローチ。








                                     

2013年8月8日木曜日

お休みのお知らせ

      都合により、8月8日、9日、10日 ( 木、金、土 ) の3日間
      お休みいたします。
      11日からのお出でお待ちしております。


製作中の鞄に遊びにきたちいさなバッタ








2013年8月7日水曜日

M 様のミニダレス

M様が久しぶりに鞄のメンテナンスにお出でになりました。
そして久しぶりの鞄との対面。
ゆっくり観察、よしよしと頭を撫ぜてあげたくなる。
わかりやすい表現をすると自分の子供のようなもの。
10年たったこれらのものは味だか凄みだかを放ち存在感を増している。
しかし、私にとってはすこしづつ劣化をしながらも必死で
持ちこたえるけなげな存在です。
この先も美しく経年変化をしておくれ、と入念に手入れをします。
又、何年か後に会えるのを楽しみに、M様に送り返させて頂きました。









2013年8月3日土曜日

トランク用ベルト2

トランクの胴に回すベルトには南京錠を取り付ける金具がつきます。
その行程を少しお見せしようと思います。
真鍮のブロックに型取りの線を引きノコギリ、ドリル、ヤスリを使って
図面の物を作ります。最後は研磨剤で仕上げ。
これは場合によって変わります。外注に出す事もあれば、外注で作った物を
さらに手を加える事もあります。一番正確で効率の良い方法をとります。
別に作っておいたベースの金属板にネジ止めし、ポンチで打って弛み止め
をします。
それをベルトに埋め込んでこんな感じです。
使いやすさ、美しさ、耐久性を考えたものです。

最初のベルトはこの金具が曲がって修理に来ました。
過酷なベルトです。
でもこういう仕事きらいではありません。








2013年8月1日木曜日

トランク用ベルト

アルミの旅行用大型トランクの胴に巻くベルトです。
布の素敵な物が無いので革で、と言う事に、。
「これを付けると昔のトランクの風合いが出て非常にいい」とおっしゃられ、
大変気に入って頂けて、これは二つ目の黒が出来上がったところです。
耐久性に関してはかなりの過酷さが想像できました。
真鍮を削って作った、南京錠を止める金具が曲がり、
革に埋め込まれたベースが切れかかっていたのを修理はしましたが。
今のところ最初のベルトも革はそこそこ持っております。

緩ければ役に立たない、でもきつ過ぎるとバックルが止まらない。
鍵の取り付けを考えると寸法的にかなり厳密なベルトです。