2018年12月29日土曜日

定番の鞄たち

基本的には同じ定番の鞄(FL46型)が三つです。
セミオーダーの面白いところですが、お客様のそれぞれ少しずつ異なる
ご希望でお作りしてこんな風になりました。
バーガンディーはパッチをはずしてオリジナルの錠前で。
黒はオーソドックスなパッチつきで同じくFugeeの錠前です。
グリーンの鞄はパッチ、枠、持ち手に黒を使った二色コンビで
イタリア、バレーゼの小さめのデッドストックの錠前を使用しています。
頼まれる方の個性が出た鞄たちです。




2018年12月16日日曜日

十二月も半ば過ぎ

「とうとう、」なぞという言い方はどうかと思いますが今年も終盤になりました。
毎年のことですが、ものを作るという仕事の場合、ああもしたいこうも作りたいで押せ押せになった一年のしわ寄せをドッと受けて年末が来ます。
たいていは大晦日まで作業をして、除夜の鐘を聞きながら年賀状を書き、足りない部分を
元旦に書いて、二日か三日あたりに出す、、。
好きで面白くてやってる仕事なんで文句は言えません。
さて、きょうはもう少しこの鞄、縫い進めますか。


2018年12月2日日曜日

黒いFL46型

ありがたいことにいつも面白いカバン作りをさせていただいております。
なぜ40年も鞄づくりが面白いのか、どうも私の考えでは革というものが
いろいろなころあいのちょうどいい作業をさせてくれる素材だからだと思われます。
革の物質としての素晴らしさ例えば、複雑な繊維であり、もとの動物としての質感を
残し、しかも引っ張り、繰り返しの曲げ、物を支える等の強度を備えていること。
さらに仕立て上の物理的な矛盾を革ならではの伸び縮みによって
美しい緊張感に変えてしまう。
こんなおもしろい鞄づくりをもっと多くの方に特に若者に深めてほしいなぁ。
なんて思ったりしています。




2018年11月23日金曜日

昨日の奮闘ぶり

テストを繰り返した試作の鞄がやっとカタチになった翌朝、
片付けから始まる朝の仕事
なにをどうしたらまあこんなに机上がしっちゃかめっちゃかにできるのかと
荒らした本人が思うほどの混沌ぶりです。
でも実はそんな時ほど昨日の仕事が盛り上がった場合が多いような(?)
気がしています。



2018年11月18日日曜日

艶やかなコードバン

定番のコードバンクラッチ、今回は黒でのご注文でした。
馬のお尻からわずかに取れる、一枚の面積がとても小さい革です。
それもあって、このクラッチは30cm × 20cm × 3,5cmと比較的小ぶりなサイズです。
コードバンならではの肉感的な艶が黒だとより引き立ち、
それでいてドレッシーな雰囲気に仕上がります。




2018年11月11日日曜日

ボックスカーフ の万年筆ケース

ボックスカーフ の美しさは多くの方がご存知ですが
この革の素晴らしいところは表面のキリッとした高級感だけではありません。
表面の下、つまり革そのもののクロム鞣ならではの強さにあります。
腰の強い繊維は、繰り返しの曲げによるドレープの出方がいわゆる柳腰で
長い期間の使用による経年変化が非常に美しいのです。
男性的とも言えるタンニン鞣しのそれとはまた違う美しさです。
もちろん仕立てに気をつけなければそうはなりませんが。
このケースが10年以上経った状態をたのしみに作りました。
(万年筆ケースはサイズ等に合わせた、オーダーのみでお受けしております。)









2018年11月3日土曜日

ダークグリーン KM39 の経年変化

使用感のある革製品の美しさは作った者にも読めない場合が多いものです。
微妙な質感を持つよう鞣された革が受けるいろいろな種類のストレス、(擦れ、曲げ、
引っ張り)による数年後をとらえるのは難しい。
私どもにできるのはそれらのストレスをなるべく的確に想定して織り込みながら
仕立てようと努力することくらいです。
もちろん仕立てにおいて考えなければいけない要素はそれだけではありませんが、、。
仕立てた当人としては新品の時の鞄の印象を強く持っているだけに
数年経つと本当に思いがけない美しさに出会うことが多いのです。  
素材と使用する人との合作で出る美しさです。









2018年10月25日木曜日

鞄教室生徒さんの習作

最終的には思ったものをクオリティーも含めて
自由に作れるようになっていただくための布石として、
教室では基本的に同じものを同じ時間に作業してもらいます。
写真は大中小の小型の物入れを入れ駒という手縫独特のステッチで作り上げる
訓練で、早めにできた生徒さんの作品です。
作業の資料は見本も含めて教える私どもが作るのですが、一番大切なことは
教える内容に疑問を感じることもそうですが、何故そうなのか、自分はこう思う、
こうしたい、こうあるべきだ、という、
それぞれの作業について常に考えることにあります。
作業に正解はありません、ですからメソッドもありません。
全ての作業は、今の自分ならこう作るのがベストだ、の連続なのです。
これはそのままFugeeの鞄の作り方です。
それにしてもみんな上手です。










2018年10月19日金曜日

素敵な組み合わせ

アイテムごとに違う革をお選びいただくのもたのしいですが、
オーダーの場合にはそろいの革でご注文なさるお客様も多くいらっしゃいます。
写真は上から長財布と名刺入れ(箱型)をフランスのゴート(山羊革)で、
次は、薄型札入れと小銭入れをカーフの型押しでおつくりしたものです。
続いてチャリ革で二つ折り札入れと名刺入れ、象革で札入れと小銭入れ、
ボックスカーフの長財布と名刺入れです。
それぞれの美しさがあります。












2018年10月14日日曜日

今年の小物作り(3)

小銭入れ2種類です。
左側はトラディショナルな形で昔はドル入れと言われました。
手縫い独特の入れ駒という縫い方をしたものです。
非常に美しい形で使いやすいものですが比較的デリケートで外的な力に
弱いという難点があります。
例えばズボンのポケットに入れたり、さらに座ってしまったりしたら形が
崩れてしまうことがあります。
右はポケットに入れても大丈夫な仕立てになっています。
フラップを差し込んで蓋をするタイプで、コンパクトな見た目より
多くの小銭が入ります。
私も試しの使用を4、5年しておりますが毎日快適に使っております。

開け方ももちろんですが作り方も全く異なる定番の小銭入れです。







2018年10月10日水曜日

今年の小物作り (2)

カードを両側に一枚ずつ入れるタイプの二つ折り札入れです。
少しガンコに仕立ててあります。
何年か使っていくと美しくなじんできます。







2018年10月6日土曜日

今年の小物作り (1)

毎年、定番小物の制作に当てる期間となっておりました8月9月が終わりました。
お客様にご注文いただいているものを納品した後に展示用のものは
そう多くは残りませんが現在普段より豊富な種類をご覧いただけます。
当然ながら鞄よりも数を作ることができる小物です、とはいっても
素材が裏も表も同一のものは今回は一つもありません。
そうなるとステッチの色はもちろん全体の張りをどうするか等
ひとつづつそれぞれテストもし、作業もかわります。
2ヶ月間のしごとの成果を並べて見るのが密かな楽しみであります。
上の写真はボックスタイプの名刺入れ、
下は、薄型札入れと薄型名刺入れです。










2018年9月29日土曜日

F様のトートバッグ 完成

完成した鞄です。
紐の絞り口は左右に。黒檀の留め具を滑らせて開閉します。
鞄本体の質感に負けないように狙ってつくった共革の紐は太さや張りもかなりのものなので、引っ張る距離をなるべく短くし、スッキリと見せる方法を探りました。
このまとめを考え、具現化するのがいちばんの山場でしたがなかなかうまくいったと思っています。
一見シンプルな形ながら、巾着部分の細かい造作がアクセントとなり、
素材の質感とテクスチャーにもささえられ、大迫力の男性らしい鞄に仕上がりました。














2018年9月22日土曜日

F様のトートバッグ 4

しっかりした形のトートバッグの上に取り付けるソフトな革の巾着は
単に丸い筒状に作って鞄の口元のだ円に添わせて取り付け上を絞れば、、
とはいきません。
開け閉めの容易さ、大きめのファイルの出し入れのしやすさ、
それとまとまりの美しさも必要です。
絞るひもは滑りが良く、開くときにスムーズで閉じるときスッと止まるように
素材、機構を考えひもを象、とめ具が黒檀になりました。









2018年9月15日土曜日

F様のトートバッグ 3

ハトメは削って研磨してやっと気に入ったスッキリした形状になりました。
鞄の上に着く巾着は中のものが見えないようにというのがメインの用途のもので
試作の結果、美しさと使い勝手を考え二分割にしました。
その他細かいディティールにもかなりこだわった作りで本当に少しずつですが
形になって行くのが楽しみな毎日の作業です。









2018年9月9日日曜日

F様のトートバッグ 2

鞄にはいくつかの大きめのファイルを入れることが多いとのことで
本体はしっかりと、しかし素材の質感を殺さないよう仕立てます。
持ち手を離した時に下にぶら下がらないように又、肩にも掛けられるように
とのたってのご希望でしたので、持ち手を取り付ける根もとはD管を介さず
直接縫いつけることにし、不便にならない範囲で最短の長さにさせていただきました。
これを解決するのは強度、耐久性の面から難問の一つでした。
そして鞄の口元につけるソフトな革を使った巾着の試作は
写真下のように本体との関連を保ちながらいっしょに進められます。






2018年9月2日日曜日

F様のトートバッグ

開口部を巾着のようにしぼれる大きなトートバッグのご注文です。
男性的な質感、安定感を出したものを作り上げます。
「和風にならないもの」というのもF様のご希望です。
難しいのは全体のバランス、巾着部の形状そして本体とどう繋いで行くか。
写真は何度目かの試作です。
ハトメも加工したものを使うことにしました。
どう出来て行くのかご覧ください。


2018年8月25日土曜日

G.K様のKM39型

スターリングシルバーの錠前を使ったG.K.様ご注文のKM39型ができました。
是非エイジングを楽しみながら長くご使用いただければと思っています。
私共がこだわるものに鞄の耐久性があります。
それを左右する大きな要因の一つはコバの堅牢さです。
革製品の場合難しいのは素材自体がしなやかで柔らかく、曲げたりすることができる
ところです。
コバをただカタマリのように固めれば大丈夫と言うものではなくある程度の柔軟性も
要求されます。
まだまだ難しいところの多いコバの磨きですが、時間をかけてしっかりみがく事で
シュリンクレザーのようなクロム鞣しのソフトな革も綺麗で堅牢なコバを作るよう心がけています。








2018年8月18日土曜日

もう夏の終わり?

暑い”と愚痴を言う元気も出ない暑さでしたね。
当アトリエでも夏風邪から長期微熱に悩まされた夏前半でした。
Fugeeでは只今小物を作っております。
空も高くなって日差しも秋の気配です。
さあもう少し頑張りましょうか。
残暑の出現を恐れながら作業する今日この頃です。




2018年8月11日土曜日

紺色のPM40

よくありそうな、どうという事のない鞄です。
もし実物をご覧いただいてなんだか膨らみが感じられる、いい質感を感じられる
と思って頂けたら嬉しいのですが。
私たちの鞄つくりにはなるべく偶然をなくそうとしています。
その為うしろでは色々な作業をしています。
革がどう動いてくれるか、どう力に対応してくれるかテストをします。
力が全くかからない部分の型くずれをどうふせぐか、も大事なことでした。
その他もろもろ、、。
でも最終的には、手を付けてファスナーを付けて革を縫ったらこうなるよね
というふうにつくります。
見た目は「普通だけどどこか違う鞄、、」中身は「全然普通じゃない鞄」、目指します。






2018年8月4日土曜日

青海波?

ひとつの鞄の胴になるパーツです。
それぞれ細かい漉きを終えた表になる革と裏打ちの革をこれから
接着しようというところです。
ちなみに裏打ちの革とは、表の革の強度や質感を出すために張り合わせるもので、
裏地に使う革とは別のものです。

見えている面はすべて革の裏側です。
まさに舞台裏ですが、並べて見たら青海波のようだったので
思わず写真を撮りました。
下の写真はすべて貼り合わせた後の胴のパーツを表から見たところ。




2018年7月28日土曜日

ふたつめの FN44型

前回に引き続き、新型FN44型のご紹介。
FM42型のオーダーをいただいておりましたが、多くのファイルをお入れになるということで新型に変更になったお客様の鞄です。
ゆったりとした力強いカーブが特徴のFM42、FL46 に比べて、折りたたまれて内側に入り込む部分をできるだけ少なくなるよう型紙や仕立て方を工夫することで鞄の内側のスペースを大きく確保することを可能としました。硬いファイルをたくさん入れても鞄の真ん中にすんなり入ってズレないようにするための取り外し可能な器具(3枚目の写真)もつくりました。入れたファイルは底にある左右のパッドのあいだに収まり、鞄を動かしても内側に入り込んだ部分の革に当たって擦れることを防ぎます。

ペーパーレス化が進む現代。それによって生まれる新しい鞄の発想もたのしみではありますが、そもそもモノを入れて持ち運ぶ道具としての鞄。働くビジネスマンたちに心地よく寄り添うアイテムとしてご要望がある限り、つくり続けていきたい鞄らしい鞄です。

錠前はお客様のご希望により、お持ち込みになった鞄に付いていたものを使用しています。錠前本体部分はバラして磨き直し、ベロに付く方の金具はこの鞄の雰囲気に合うようなものを自作しました。
ダークネイビーの艶やかな本体にさり気なく主張するメカニカルな錠前。
オーダーならではの鞄となりました。