2019年11月17日日曜日

息抜き半分の旅 2019(4)

ずっと訪ねてみたかったタンナーさん。
イギリスのタンニン鞣しといえばoak bark(樫の木の皮) というのは知ってはいました。
でもそれは昔の話だろうと思っていたのは(少なくともこのタンナーさんでは)大きな間違いでした。この地域の鞣しとしてはRoman(ローマ時代!?)から、この鞣し工場としては150年の歴史があるそうです。

職人であり社長の説明を聞きながら(正確には分からないながら必死)案内される建物や作業場の空気はクリーンで美しく、工場からただようどこか懐かしいような独特な匂いから連想できたのは古い味噌蔵や醤油蔵でした。
「鞣し」と「発酵」は科学的にいえば全く違うものでしょうけれど、「良い生きた菌」がたくさん住んでいるのではないかと体で感じるものがありました。
昔から基本的なことはほとんど変わっていないというシンプルで目に見える工程は、人間が五感を使いながらゆっくりつちかってきたノウハウと歴史とともに、ああ、鞣しとはこういうものなんだと納得させてくれる深いものがありました。
鞣しのエキスパートであった先先代の社長はピットの中のタンニン液の良し悪しをなんと舐めて確かめていたというのもビックリはしましたが、見学を終えればなんとなく頷ける話です。

写真上
一枚づつ棒に吊り下げられ、槽に浸けられる革。
濃度の薄いタンニン槽からだんだん濃い槽に移しながらゆっくり鞣しは進む。
鞄用の革は約3ヶ月、靴底の革は約1年をかけて完成する。

写真中
靴底用に更に硬く仕上げるためのタンニン槽。
靴底用のピットには更にチェスナットの実を包む皮のタンニンが追加される。

写真下
oak bark(樫の木の皮)の山。1年近く寝かしたものを水に浸けてタンニン液は抽出される。







2019年11月10日日曜日

息抜き半分の旅 2019(3)

偶然にも幸運に恵まれて、旅の初日にはロンドン市内のホテルで1日だけ開催される
FRENCH TANNERS EVENT に行くことが出来ました。
フランスの革鞣し屋さん14件ほどが出展するこじんまりした革の展示会で、どのタンナーもそう多くの実物革のサンプルをお持ちになってはいませんでしたが、とても見やすく話も伺いやすく有意義でした。天井高く間接照明だけのヨーロッパならではの重厚な建物の
一室と、隣に続くお部屋では立食で飲み物や、お昼時にはビュッフェ形式の食事も楽しめるような素敵な演出になっていました。
訪ねたことのあるタンナーさんと再会できたり、SNSなどでコンタクトをいただいていた人や、日本でお会いしたことのあるイギリスのシューメイカーのお兄さんにバッタリ会ったり。
そしてそこでお会いできたガンメイカーとガンケースメイカーの紳士のお二人の熱かったこと。特注の狩猟用のガンとそれ専用のケースを誂える職人さんたちでした。お互いの作品の写真を見せ合いながらフジイと意気投合。ここはこうだああだ、これのここのところを見てくれ、お前のコレもなかなかだ などとやりとりも白熱。話の中で、「前と同じものはつくらない。前よりも進歩したものをつくるのがオレの仕事だ」という言葉が聞けたのがなによりの刺激となりました。

本当にたまたまの機会でしたがヨーロッパの微妙なウネリを見た気がしました。
日本でモノつくりをする私たちは自分を取り囲むウネリの中で何を受け入れ、
どう自分のものにしていくのかを感じ考える時代が来ているのでしょう。

写真は革のイベント後に伺った素敵な骨董屋さん。
例によって、慣れない外国でコミュニケーションに必死になっていると資料以外の写真を撮る余裕がほとんどありません。。。




2019年11月3日日曜日

息抜き半分の旅 2019 (2)

旅の日程はかなりタイトなものになり出発前から”体、もつかしら。”と
少し心配でした。
時差ボケに風邪、頭に何重かの幕がかかった状態での日々でしたが、それぞれの
予定が楽しいこと感動的なことで、その瞬間瞬間は疲れを忘れています。
写真は始めてお会いしたにもかかわらず暖かく迎えてくれ、真剣に私たちを知ろうとし、私たちに伝えようとしてくれたイギリスの鞄の職人であり作家の ニールマクレガー、
ヴァレリーマイケルお二人の居間の素敵なコレクションディスプレイと工房の様子です。
具体的に違いがわかるものはこちらからもお持ちしてお見せし、差し上げたり、又
逆に頂いたりもしましたが、私たちが一番知りたいと言うか感じ取りたかったのは
革に対した際の彼らの感覚で、革をどう思っているのか、
彼らにとって革とはどういう存在なのか、それを感じ取りたかったのです。
それによって何十年か続けてきた革の仕事の
新しい何かしらの方向を見つけられたら嬉しいことです。
過去の見たり聞いたり会ったりした経験でかなり違うであろうことは
察していたのですが、作っている人に作っている現場で会う
というのは刺激的なことです。
ああ、やっぱり彼らも私たちと同じように、世界のどこかで革を使ったものつくりを
している人たちに会って話して新しい何かを感じたいと願っている人たちでした。
幸せな、それぞれの瞬間を逃すまいとする必死の時間が過ぎていきます。

半世紀ほどのキャリアを持つお二人は、今回の旅計画のやり取りの中で、
私たちとは長い友達付き合いのフランス人の同業者とそれこそ長い付き合いをしていることがわかりました。
三つのメールが入り乱れて出かける前から驚きワクワクの状態でありました。





2019年11月1日金曜日

息抜き半分の旅 2019

今年の旅はイギリスの革文化の奥深さや粘り強さを突きつけられた旅でした。
又、常々感じていることですが、私達にはっきりとはわかりづらいところもある
革に対する肌感覚の日本人との違いを改めて感じた旅でもありました。
もちろんお会いした方々のほとんどが私たち以上に革にドップリと浸かったような
生活の方達でしたが、、。
(写真はコッツウォルズの美しい小さな村)
本日よりボチボチと仕事をはじめております。