型紙の検討には随分時間をかけましたが使用する革の表情、質感を見極めながら
いざ制作です。
漉きと裏打ちのテストも時間をかけます。
仕立てとしてはそれ程複雑なものではありませんが出来上がったときの
この革ならではの鞄の表情は未知数なのでテストも必然となります。
「星形の鞄」というお題をいただいた時はちょっと驚きましたが
可能性を探る面白い仕事だと思いました。
口枠を閉じた時に入り込む部分の左右の角を強調させて星形六角形の角になる、
そんなイメージをはっきりお持ちの K様 でした。
プロポーションが一般的な鞄とかなり違うため、当初は胴は分割しないと型紙的に無理がありすぎると考えました。
それでも手曲げでつくる口枠の寸法を探りながらの図面と試作検討で
胴革を前後一枚づつのシンプルなものにまとめることができました。
下の二枚の写真は試作時です。できれば前から見た時に繋ぎ目がない方がより「星」らしさを強調できるはずなのです。
「親爺がつくる親爺のためのいい加減な雑誌」という副題がついた「Oyazine」。
デザイナーでありフォトグラファーでもある島さんがつくっています。
不定期に発行されるこの雑誌は、島さんと40歳以上の親爺執筆者( Oyazineスピリッツがあれば性別、プロ、アマを問わないらしい)による投稿で構成されています。
世間からはみ出しているように見えるかもしれないけれど、自分に対してはとことん正直者を貫くOYAzineたちのディープな世界が展開され、どの号も引き込まれます。
ひょんなご縁で親爺フジイが取材をいただき、最新号の記事になりました。写真(なんと表紙も!)と文章は島さんによるものです。Oyazineフィルターを通して語られるフジイ像がいい味わいです。
読んでみたい方は是非Fugeeまで足をお運びください。差し上げます。
また、Oyazineは置いてくれる店を募集しているということなので、
ご興味のある方、心当たりのある方は下記までお問い合わせください。
https://www.facebook.com/oyazine/
思えばこの鞄をつくるために革を広げている写真がこのブログの1回目でした。
あれから丸8年。あの時はまだ渋谷の小さな店で仕事をしていました。
この鞄がN様のもとで刻んだ時間を思うとともに、Fugeeのこの8年間をあれやこれやと思い出しながらメンテナンスをさせていただきました。
ご愛用いただき使用頻度もかなり多かったとのことで、擦れ傷の多かったパッチやパイピングの部分などに補色をしつつ全体に丁寧に油分を補いました。
ダークグリーンの山羊革の色が濃くなり艶感も増し、タンニン鞣しの革らしい経年変化がいちだんと深い味わいを見せてくれています。
鞄ともども、これからも長いお付き合いをよろしくお願いいたします。