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2025年2月20日木曜日

掛川二の丸美術館

ご縁があり、ものづくりの友人にかねてから誘って頂いていた掛川二の丸美術館にやっと行くことができました。

現在、特別展として「白の細密工芸ウニコール」が開催されています。
もともと喫煙具のコレクションで有名な二の丸美術館ですが、特別展にもたくさんの秀逸な煙草入れの展示がされています。
煙草入れとは、江戸時代から明治時代に主につくられていたもので、キセルを入れるための筒、帯に引っかかるための根付け、煙草の葉を入れるための袋、などで構成されていますが、素材も専門技術も多岐にわたります。
我々は鞄の仕立て屋なので、どうしても革を使用した「袋」といわれる煙草入れの本体に目がいってしまいます。現代の我々がつくっている「鞄」というものは明治時代に西洋から入ってきた革鞣しをベースとした技術で生産される革で出来ており、西洋化された生活の中で洋服を着て持つためのアイテムです。明治以前の日本人の暮らしや感覚は、絵画、文献、小説や映画などから想像するしかありませんが、革の鞣しやそれらを使った仕立ての技術に関してはほとんど資料がないといってもいいのが現実です。
西洋ベースのいわゆる「鞄」はアンティークの素晴らしいものを見ても仕立てが予想もつかないということは正直あまりありません。しかし、革の煙草入れたちの中には、何十年も革を触ってきた我々の想像を超える摩訶不思議なつくりのものがたくさんあるのです。
どんな道具を使ってそこまで細かい細工が可能なのか。拡大鏡でも見えないほど小さいピッチで掬って切れない当時の革とはいったいどんなものなのか。そんなに細くて堅牢な針が存在したのか。。。疑問は尽きません。

それにしてもいちばんの刺激は、「効率」とか「つくりやすさ」などというものを微塵も感じさせない、というよりむしろその全く逆に向かいながら精緻な表現の高みを追求するものづくりの世界がビシビシと伝わってくることです。
脳みそのつかい方や時間の流れかたも現代とはまったく違うような気さえします。

革を扱う人以外にも、布を扱う人、金工をする人、漆を扱う人、竹を編む人、角を彫る人、、、、、
それぞれのものづくりに携わる多くのひとたちに感じていただける何かがあるはずです。

高級な品であったのは確かですが、神様や高貴な方に献上するような美術品とは違い、装身具のひとつである根付けや煙草入れといった、手の中で愛でられる身近なものであるからか、当時のつくりての息遣いも生々しく感じられるようにおもいました。

限界のない自由で厳しいものづくりの大宇宙は現代のわたしたちのまわりにも無限に広がっているはずなのだ!という想いを胸に、掛川城が美しく映える夕方の空を仰ぎ興奮しながら美術館をあとにしたのでした。













2024年6月5日水曜日

ピッグスキンのテクスチャー

 魅力的なキリッとした豚は最近なかなか目にしません。
スターリングシルバーと合わせたこのKM39はシュリンクレザーで作るそれとは
全く違う表情を見せてくれました。
うっとりする美しい鞄です。
鞄の質感はある程度は思いを込めて狙うものですがやはり何と言っても
その革の持っている本質的な表情は素晴らしく、
その範囲を超えるなぞということはしないし出来ないし良くはならないものです。
やっている事は恐る恐る革に尋ねるという方が正しいかもしれません。






2019年5月11日土曜日

革の生命力2

革の美しさ、力強さ、あるいは繊細さはタンナー(鞣し屋さん)の力量、
美意識のなせる技で、その種類、方向性、微妙なニュアンスは
それこそ無限にあると言ってもいいと思います。
もちろんダメな革もあるのも確かです。
何かにとても向いているが他の何かには使えないというものもあります。
さらに言えば動物なので一枚一枚個体差があるのも当たり前です。
そういう素材を使うものづくりは毎回変化の連続で本当に良いものを作ろうと思ったら
決まり切った技術とかルーティーンでは太刀打ちできないものです。
アニリンカーフを使った小型のボストンバッグの完成図です。



2019年5月6日月曜日

革の生命力

最初ほとんどの革はその動物の体型が想像できる形で作り手の前に現れます。
しかし当然ですが生きていた時の躍動感はありません。
その代わりタンナー(鞣し屋さん)が吹き込んだ全く別の種類の美しい、
素材としての生命力を感じられるものとして私たちの目の前に広げられます。
面白いのはその革が作品(私共でしたら鞄ですが)に徐々に形作られていくに従って
生命力はさらにハッキリと、強い印象を持って現れてきます。
写真はそれらを感じて作り手の興奮と緊張が高まってくる、作業のなかほどです。




2018年5月28日月曜日

美しいデッドストック

革はチャリ八方、錠前は材料から工房で製作した
スターリングシルバーのダレスバッグです。
凄みのあるシボが特徴の山羊革ですが丁寧に仕立てると非常に上品なカバンになります。
鞄を始めた40年前には高嶺の花の革でボックスカーフと同様に、
こんな革を使える日が来るだろうかと思っていたくらいの憧れのものでした。
デッドストックの古い革なので少し脂が抜けた感じがありますが
まだまだ存在感のある美しい革です。
最後の仕上げの口元を一周縫う作業です。





2017年11月11日土曜日

コードバンの革

仕立てる職人側からコードバンを見ると非常に癖の強い、つくりの方向性をかなり
規制される革です。
折り曲げに向く方向向かない方向、場所によるコードバン層の厚みの違いと
革そのものの厚みの違い。
しかし、裁断そして漉きのために革包丁を入れた時の感覚は特別なものがあります。
上質なタンニン鞣しならではの、刃先が革に吸い込まれる様な手応えです。
腰の強い美しいこの革で、クラッチバッグをつくりました。















2015年7月14日火曜日

力強さと繊細さ

FL46型を二つ並べてみました。
4ミリ厚のブライドルの圧倒的な質感を何処まで繊細に表現できるか。
この鞄を作る時にはいつもそう考えます。
舞踏家が自分の体を極限まで使って表現するのと少し似ているかも知れません。
大胆で力強いが決して荒くはない、むしろ繊細に。
いろいろな部分で悩みの多い鞄です。
基本的に平板になった非常に硬い革を金属の枠や平らな底に支障無く
曲面でまとめるなぞというのは大きな矛盾をはらんでいることなのです。
紙のような伸び縮みの無い素材では不可能です。
ブライドルの場合この矛盾にこそ革ならではの、特に厚く硬い革であるからこその
美しい張りや緊張感が生まれます。




2013年9月29日日曜日

迷うたのしみ


これから作る鞄の一部を集約したような奇麗な手縫いのステッチ見本。
オーダー頂いた鞄は使用する革によってあらゆる表情を見せます。
革の柔らかさ、固さによって、又その厚さや質感、裏打ちの有無、
裏打ちをするとすればどういう質感の革をどの厚さで。
テストを繰り返しその鞄に最良と思われる革の状態を探し出します。
それは非常に微妙なもので、もし、そうやって決めた質感のその革で、
同形の2cmスケールアップした鞄を作ったら、
出来上がる鞄は大きくする前の鞄とは全く違う質感の物になります。
当然のことですが、このように革は最も大きな、鞄を決定づける要素です。
しかし、実は他にもその質感を決定づける大切な要素があります。
ステッチの色、太さ、縫いのピッチによって又、手縫かミシンかによっても
鞄の表情はガラッと変わることをご存知でしょうか。
素材としての革の質感をどこまで持っていくのかは、お任せ頂くことになりますが、
ステッチを決定するのはお客様に是非参加してほしいのです。
原則として見本はお客様に差し上げております。
ゆっくり、ワクワクしながらご自宅でお決め下さい。


2013年8月31日土曜日

ある夏の日

     黒のボックスカーフ(子牛の革)に型紙をのせて、何度も確認して
     今まさにカットを始めるところです。
     一般にボックスカーフはとてもデリケートで、美しいのですが
     傷もつきやすい革です。高級な革の代名詞のようなもの。
     でも、この革はただデリケートなだけではありません。
     美しく繊細なのは表面の話で、実はこの革の繊維は
     非常に粘り強く柳腰なんです。
     ですからボックスカーフでしっかりした仕立てた鞄は
     経年変化も独特の美しさを放ちます。
     この鞄はどんな表情になって里帰りしてくるのか、楽しみです。






2013年3月8日金曜日

最初のジャッジ

     革を断つ、中心から二つに。
     慎重に型紙を載せて、何度も外し可能性を探る。
     なんとかベストな革取りをしたいと思う。
     革としての方向性、部位による強さ、弱さ。
     鞄になった時の部品にどのくらいの力が想定されるのか。
     その大きさ方向、必要な張りの強さは。
     注文が決まり、お客様の名前を付けられてしばらく革棚に
     有ったこの子牛の革は今部品となり、鞄としてまた日の目を見る。
     これが鞄を作り上げる時の最初のジャッジ。出来上がるまで
     苦しく、せつなく、楽しいジャッジは続きます。


2012年11月28日水曜日

こころ躍る時間

     フルオーダーいただいたカジュアルな雰囲気の鞄をつくるところ。
     足したり引いたり、どんな味付けをするかを思案し、
     テストをしている時はこころ踊る。




     カバの革は絵画のよう。
     深く刻まれたシワや、傷がなんともいえない深い味わい。







2012年7月29日日曜日

芯こそ素材吟味

ハンドルの種類や鞄の雰囲気、大きさによってもどんな革を芯に使うかは若干変わるが、
繊維が緻密で丈夫な、持ち手芯にジャストといえるタンニン鞣しの牛革は
今となってはなかなか手に入りづらく、芯専用にストックしてある。
出来上がってしまうと見えない部分だが、ハンドルの芯の素材の選択は、鞄の持ちや
使い心地を左右する 重要なポイントのひとつでもある。





2012年7月7日土曜日

緊張感のこと

革の美しさについては多くの意見がある。
その一つに革にストレスを与えた時の緊張感があると確信している。
太い持ち手も、厚い革をおもいきり曲げる口枠の鞄も曲げた状態では作らない。
まっすぐに作って力の限り曲げて取り付ける。
もちろんそれに耐える革を使うのが大前提だが、曲げても嫌なシワが寄らないのは
弛みのない仕立てが出来るかどうかにある。
とにかくその緊張感が、張りが美しいと思っている。













2012年6月27日水曜日

チャリ八方



ゴート(山羊)を手揉みしたシボの凄みと上品さを兼ね合わせた美しい革。
私が鞄を始めたころにはもうすでに貴重なもので、有名デパートの棚の
一番上に当時の名人が作ったであろうダレスだのカカエだのをよく見た。
ボックスカーフと同じようにあこがれの革で、いつか使ってみたいと思ったものだ。
ハガワでドル入れなどの小物をつくったことはあったが、
数年前にデットストックを手に入れることが出来た。
ゴツゴツとした見た目の印象よりも案外デリケートだが、とにかくその存在感と
質感には圧倒される。仕立て甲斐を感じると同時に、西洋人のつくった革とは
ひと味違う、古き良き日本の美意識を感じる素晴らしい革。



店置き用につくったダレスバッグ


フルオーダーのボストンバッグ



2012年1月11日水曜日

新春のしごと

                             フランス産の山羊の革。
                             深いグリーン色。 
                             ぽったりとした質感がたまりません。
                             フルオーダーのショルダーバッグをつくります。
                             まずは触って、仕立てのイメージを膨らまします。


                             ドキドキするたのしい瞬間。