鞄でも小物でも細部にわたる形状や仕立てを決める時に
一番大切にしなくてはいけない事は、その革の良さが出せるかどうかです。
それがもしうまく行ったらもう充分。
もちろん革の種類によって作業の内容は変化しますが、形をいじくり回すのも
無意味な物を取り付けるのも良いとは思えません。
あとは緻密に、正確に仕立て上げます。
スターリングシルバーの仕切り板を忍ばせたこの名刺入れは、
ドル入れと同じように手縫いでしか表現できない成功した製品だと思います。
この小銭入れを昔の方々は「ドル入れ」と言いました。
30年以上前小物の名人に仕立てを叩き込まれました。
「閉じたとき革の張りで少し抵抗が有り閉じきる寸前で吸い込まれるよう作れ」、
そして「何年経ってもそれが無くならないように作れ」とよく言われました。
私なりにアレンジして細々とですが、途切れず作っています。
構造的に革の性質がよく生かされた作りになったおり、見た目の形、革のあり方も
無理な部分を全く感じない美しいものです。
完成度のある物とはこういう品物なんでしょう。
このシンプルな札入れが誕生してから約10年ほど経ちました。
革ならではの美しい経年変化をたのしめるように考えて、素材ごとに張りと厚みを
吟味し、しっかり貼り合わされたパーツで組んであるので、
出来たばかりのときはかなりのボリューム感があります。
お手入れをしながらゆっくりエイジングをたのしめる仕立てにこだわりました。
下の2枚の写真は2年ほど経過したクロコと5年ほどのボックスカーフです。
ご要望が多かったのにもかかわらずなかなか定番化できなかった長財布でしたが、
この度Fugee standard lineのアイテムに加えることができました。
手数が多い仕事のため、サンプルをお手に取ってご覧いただいた上での
受注生産となります。
2種類のサンプルを作りました。上の写真左から、エレガントなボックスカーフ、
ソフトでカジュアル感のあるカーフのシュリンクです。
横並びに入るカードポケットは片側4枚と6枚からお選びいただき、ササマチの有る無しなど、小変更が可能です。もちろん革、ステッチの色もお選び頂けます。
同じ型紙でも、素材が違うと当然ながら微妙に仕立ても変わります。
そして、雰囲気と手触りも全く別ものとなります。
ドレッシーな張りと艶をお楽しみいただけるボックスカーフの仕立てと
ソフトでしっとり手に馴染むカーフシュリンクの仕立て。その質感の違いを
是非実際にお手に取ってお確かめ下さい。
ご相談のお出でお待ち致しております。
外装がカーフシュリンクのタイプの内装は
型押しのカーフを使用しています。
都合により6月14日(金)はお休みいたします。
15日(土)よりのお出でお待ち致しております。
あたためてきた新作を含め、ひさしぶりの小物の製作いろいろ。
都合により6月8日(土)は一日中アトリエを留守に致します。
お出では9日以降によろしくお願いいたします。
厚手の柔らかいゴート(山羊革)を使った小型の口枠鞄です。
「スーツを着ない時間に持つ、女性で言えばハンドバッグのように
日常の物を入れて常に自分の周りにある、そんな鞄でショルダーバッグはちょっと。」
そういうご注文でお作りした物です。
実はこういう事でFugeeにお出でになる方はけっこういらっしゃいます。
手をしっかりさせて男性的に、全体の大きさとのバランスよく。
試作を何度か繰り返してプロポーションを決めました。
トロッとしたソフトな質感がなんともいえません。
ショルダーバッグの、手が自由になる気軽さもいいですが、
たまにはこういうもので決めるのも素敵です。
大きく分けて箱物の仕立て方は2種類で、木ですっかり箱を作って
それに革を張り込むのが一つ。もう一つの方法は、芯材(昔はボール紙、
今は合成の芯材)を何枚かと革を張り合わせ、表が革の固い板を作り部品にする。
その部品同士を手縫独特の方法で縫い合わせ、要所にフレームを組み込んで仕立てる。
この方法だと全体にふっと丸みが出ていかにも革のケースという感じが出る。
以前はこの仕立て方が好きで小箱、アタッシェからトランクまで作っていた。
木で仕立てた直線的なキリッとした雰囲気も素敵だが、それとは異なる
この少しレトロな風合いを好まれる方も多い。
下の写真はその仕立てのアタッシェケース。(数年ご使用になられたもの)