2023年3月31日金曜日

試作の楽しみ

今回は定番のMK42、MK44の仕立て調整のための試作です。
試作は時間と手間がやたらと掛かる作業ですが実はとても楽しい作業です。
それはなんと言っても「どんな事を試しても良い」と言うところです。
もちろん何度も同じような事を繰り返す訳にはいきませんのでどう言うことを目的とした
試作なのかは綿密に検討はします。でも何を検討するかと言うのは自由です。
こう言う仕立てを試したい、革の厚みはこのくらいでどんな表情の鞄になるか、形の限界は、全体を整えてどのくらい美しいものが出来そうか等々、糸の太さ、ステッチのピッチ、コバの厚さ、今まで見たかったあの部分を念入りに、、何でもOKです。
慎重に丁寧に鞄を作っていくのは勉強にもちろんなりますが、試作を色々な方向から眺めながら組み立て感じていくのも同じように勉強になります。



2023年3月19日日曜日

使われたものの味わい

N様のコレクション。
メンテナンスでお預かりしました。 
使用頻度の多いものは擦れたり擦り切れたりのダメージも当然ながらありますが、ちょっとした縫い直しや部分的な色の補正など細かいところをチェックしながら全体的に油分を補給していくと、革がふわーっと息を吹き返す瞬間を感じる時があります。そこからみるみるうちに表情が甦ってくるのが分かります。手をかけると反応で返してくれるのは天然素材ならではのことなのですが、つくるときの革の扱いと仕立てがまっとうでなければそれはかないません。メンテナンス中に良い反応が帰ってきたときの喜びはつくったものだけが味わえるささやかなご褒美です。




2023年3月10日金曜日

鞄屋のお付き合い

 定番のFM42、お客様の手に渡ってから12年目の顔です
有り難い事です、つくったものを(自分の作業を)時間を経てから目の前にできるとは。
同じ形の鞄でも、使い手であるお客様によって表情はさまざまに変化します。
実用品であり嗜好品であり経年変化をするものでありそれぞれの変化はご使用になる方によって異なる「物」です。
当然ですが革も長い年月を経て徐々に朽ち果てて行くのです、そしてその過程が美しいのが私達のつくる革の鞄なのです。
私はもう少しこの業界が、つくり手が、その事を真剣に考えるべきじゃないかと思います。
残念ながら今の世の中がつくり出す品物のほとんどは資本主義だからかは知りませんが
お金の計算から作るものを決めているように見えます。
自然素材である革を使用した鞄も例外ではないでしょう。
情報が溢れ出しているSNSを見てもつくり手の想い、意志よりブランド、流行りなどが中心の世界になっているのは良くわかります。
若いつくり手が本当に育ちづらい状況も気になりますが、
自分のつくった物にとことんお付き合いをするつくり手でいようと思います。