革はチャリ八方、錠前は材料から工房で製作した
スターリングシルバーのダレスバッグです。
凄みのあるシボが特徴の山羊革ですが丁寧に仕立てると非常に上品なカバンになります。
鞄を始めた40年前には高嶺の花の革でボックスカーフと同様に、
こんな革を使える日が来るだろうかと思っていたくらいの憧れのものでした。
デッドストックの古い革なので少し脂が抜けた感じがありますが
まだまだ存在感のある美しい革です。
最後の仕上げの口元を一周縫う作業です。
水に浸して柔らかくなった革を型に入れて引き絞って立体を成型する方法があります。
ステッチも無くスッキリと見えるのが利点ですが反面薄くなる部分ができるのと
絞りの深さに限界があるということがあります。
絞りの成型の他に同じようにも見えるが全く別の方法というのもあります。
このショルダーバッグは18年ほど前に作らせて頂いたブライドルレザーの
ヌメ(タンニン鞣しで染めていない革)を使ったものです。
今回はメンテナンスのためにに戻って来ました。
コーナーのパッチの裏では胴体を野球のボールのように縫って丸みを出してあります。
作り手としては非常に興味深い製作方法です。
革の持っている張り、力強さ、緊張感がうまく出せた美しい鞄になりました。
この鞄を初めのモデルとして形は変えてありますが今も
同じ作りのショルダーバッグを各色で定番として作っております。
革の原点のようなヌメもいいものですね。
4月後半から出かけた旅行から帰って来てはや1週間が過ぎました。
ゴールデンウイークにお休みをすることなど、お客様商売をしている者にとっては考えられないことですが、前回のブログで書いた5月1日の古道具市に行くためにそんなスケジュールとなりました。
言葉の壁はありますが同業者で長い付き合いの友人とは気心が知れた仲。
鞄づくりで繋がる共通の言語が、お互いの信頼関係のもととなっているのを実感できる
幸せな時間を過ごすことができました。
写真は、何故か突然参加することとなった金曜夜の宴会。
友人の住むパリ郊外の小さい村の、ものづくりの仲間たち。
鉄や木工の機械がたくさんある大きな倉庫のような工房前のスペースで、
季節がら遅くまで暮れない夕日をたのしみながら、賑やかなお酒はすすんだのでした。
いい刺激をタップリと頂いて、さて仕事、仕事。
本日より営業しております。
もう20年以上誘われていながらなかなか行けなかったパリ郊外のヴィエーブルの蚤の市
にやっと行って来ました。
毎年5月1日に開かれるこの市は道具に特化した蚤の市。
話では以前はもっと盛り上がっていたようで、鞄はもちろん、鞍、靴、家具、絨毯などの職人たちが自分達の使う道具を探しに来るところでもあったようです。
でも、そんな現役の職人たちの姿も減り、市の様子も随分変わったそうです。
職人で、無類の道具マニアの友人と朝4時半に出発。
おびただしい刃物や道具を、前の晩に手渡された懐中電灯で照らしながら物色します。
と言っても何のための道具か、どれがいいのか悪いのか皆目わからず、
友人の後を金魚の糞のように付いて回ります。
そのうち明るくはなってくるのですがその日の気温は4度、ハーと吐く息は白い寒さ。
それでもグルグル見て歩く中でお買い得な金ヤスリや古い小さなハサミ等、
幾つか買い求め満足しました。
目利きの友人は鞄からはみだすくらい買い物をしています。
彼の鞄屋仲間で、かなり遠い場所から毎年来るという同じく道具コレクターに
現場で会って、戦利品の見せ合いっこを近くのカフェでするのが習わしみたいです。
その日買ったものの中にゴミのように汚れた塊があり、友人宅に戻って
昼寝ならぬ朝寝の間に、彼はすっかり汚れを落とした塊を綺麗に磨いて
プレゼントしてくれました。
昔の優秀な会社のもので 、トレ ボン カリテ(良い素材)だと説明され、
ありがたくおみやげに頂いて参りました。
万力です。
何だか初めて釣りに連れて行ってもらったときみたいでした。