2023年3月19日日曜日

使われたものの味わい

N様のコレクション。
メンテナンスでお預かりしました。 
使用頻度の多いものは擦れたり擦り切れたりのダメージも当然ながらありますが、ちょっとした縫い直しや部分的な色の補正など細かいところをチェックしながら全体的に油分を補給していくと、革がふわーっと息を吹き返す瞬間を感じる時があります。そこからみるみるうちに表情が甦ってくるのが分かります。手をかけると反応で返してくれるのは天然素材ならではのことなのですが、つくるときの革の扱いと仕立てがまっとうでなければそれはかないません。メンテナンス中に良い反応が帰ってきたときの喜びはつくったものだけが味わえるささやかなご褒美です。




2023年3月10日金曜日

鞄屋のお付き合い

 定番のFM42、お客様の手に渡ってから12年目の顔です
有り難い事です、つくったものを(自分の作業を)時間を経てから目の前にできるとは。
同じ形の鞄でも、使い手であるお客様によって表情はさまざまに変化します。
実用品であり嗜好品であり経年変化をするものでありそれぞれの変化はご使用になる方によって異なる「物」です。
当然ですが革も長い年月を経て徐々に朽ち果てて行くのです、そしてその過程が美しいのが私達のつくる革の鞄なのです。
私はもう少しこの業界が、つくり手が、その事を真剣に考えるべきじゃないかと思います。
残念ながら今の世の中がつくり出す品物のほとんどは資本主義だからかは知りませんが
お金の計算から作るものを決めているように見えます。
自然素材である革を使用した鞄も例外ではないでしょう。
情報が溢れ出しているSNSを見てもつくり手の想い、意志よりブランド、流行りなどが中心の世界になっているのは良くわかります。
若いつくり手が本当に育ちづらい状況も気になりますが、
自分のつくった物にとことんお付き合いをするつくり手でいようと思います。



2023年2月28日火曜日

14年目の貫禄 

スターリングシルバーの錠前を取り付けたデュプイ社のシボ革を使用した定番KM39型が
里帰りしてきました。お作りしてから14年目、素敵な使用感になりました。
銀の柔らかさが作り出す槌目のような錠前の使用感もいい変化です。
新品とはまた違うお客さまの色に染まった鞄。
長い間変化を楽しめる素材は革とか木とか自然が作り出す物が一番ではないでしょうか。
お客様と共に歳をとっていく鞄、それを可能ににする仕立てをしたいと思います。




2023年2月16日木曜日

梅が満開!

二月も半ば今年も庭では梅が満開です。
人間の世界がどうであろうと季節が確実に巡って来ることに心底ホッとします。
しばらくはまだコロナやその影響で起きる色々な出来事が続くのでしょうか。
どちらにしても毎日自分達に託された作業を出来る限りの思いで進める事ができる状況に
感謝したい気持ちです。



2023年2月7日火曜日

少し自慢

最近の仕事から。
FL46、ダークグリーン。同じくFL46、 黒とバーガンディのコンビ。
ながくつくり続けている形ではありますが、毎回何かしらの発見があります。
比較的大きい鞄でブライドルレザー4mmを大胆に使った鞄はかなりの迫力のある質感に
なります。
持ち手は鞄の全体のイメージに合うしっかりした仕立てをしています。
少し自慢な事は形状と革の厚さが絶妙なこの鞄は形崩れが驚くほど少ないという事です。
そしてもう一つ、持ち手は鞄に合わせたゴツい印象ですが実際に握って持ち歩いていただくと一般的な鞄とは比較にならないほど握りやすく疲労が少ないという事です。
何故か?
そういう鞄を作りたいと考えて毎回トライを繰り返しているからです。












2023年1月31日火曜日

ボックスカーフのKM39

Fugee 定番 KM39、ボックスカーフで仕立てるとキリリとした佇まいの軽やかな鞄となります。繊細なスターリングシルバーの錠前も艶やかな素材の質感を引き立てます。


 

2023年1月25日水曜日

入れ駒縫いのショルダーバッグ

ブライドルレザーを使用した箱型の定番ショルダーバッグPMBXの制作です。
出来たものを見ると単純な四角いかたまりなのですが厚い革を重ねた縫い合わせ等
なかなか手間のかかる鞄です。
写真は入れ駒というステッチで4mmと7mmの革の縫い合わせの場面です。
このステッチは昔からトランク、アタッシェケース、パイロットケース、双眼鏡のケース、カメラケース等いわゆる箱物と呼ばれるものに良く用いられています。
その他とめ縫い、すくい縫いなどがありますが縫いの強度だけを考えるとひら縫いというミシンと同じように平らな革同士を重ねて縫い合わせる方法が一番強いと言えます。
しかし革の断面の厚みを利用した入れ駒は革以外の素材では出来ないだろうと思いますが、
エッジのある立体を美しく作ることを可能にした素晴らしいステッチです。
断面の切角、接着面の均一具合、接着方法、菱きりが切れる事、その他いくつかの要素が絡み合い出来不出来が決まります。
気持ちを集中して時間をかけて丁寧に一針一針縫い進めます。



2023年1月8日日曜日

始動しております

毎度のように日を数えるときは「アッという間に」を付けますが、
あっという間に年を越して一週間過ぎました。
Fugeeも5日あたりからぼちぼちと始めております。
去年の最後の仕事はボックスカーフのKM39型、金具はスターリングシルバーのご注文でした。
真鍮は革との相性が非常によい金属ですがシルバーの質感も特にボックスカーフのようなキリッとした革にはゾクッとするような美しさを感じます。
お渡しが新年になりましたがお客様にも大変喜んでいただき嬉しい新年の滑り出しです。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。