たくさんのパーツと部分試作の数々・・・
プロポーション、型紙の良し悪し、革の質感、強度、全体のバランス・・・
なにをどこからクリアにしていけばいいか。
セオリーはありません。
イメージする鞄に向かって、モヤモヤはっきり見えない部分をただただ地道に解決していくだけ。近道より遠回りする事の方が多かったりもしますが、
目標に向かった地道な作業の結果に裏切られたことはありません。
単純に「グレー」や「灰色」と言ってしまいたくないような、なんとも言えない色と質感のこの革はボックスカーフで、去年フランスで買いつけてきた中のお気に入りの一枚でした。出会った時から、ああダレスになった姿を見てみたいなと思っていました。
いち動物としての個体と鞣しや染色の塩梅など、いろんな条件が複雑に絡みあうため、革というものは本当に一期一会の素材だと切実に感じます。
ショウルームの新しい展示用としてつくっている途中に、あるお客様に見染められてありがたい事に早々と嫁ぎ先が決まってしまいました。展示用サンプルとしての役目が終わるまでの数年間はFugeeにございますので、興味のある方はどうぞお気軽に見においで下さい。
30年ほど前に制作した女性のための小さい鞄です。持ち手の付く棒屋根金具部分の重さに対して、軽さ、柔らかさと繊細さをどこまで追い込めるかを悩んでつくっていたのをよく覚えています。
先日お客さまの S 様 が、中古品サイトで見つけてお買いになったこの鞄を、もしかしたらFugee製ではないでしょうかとお待ちになりました。ご縁があり、ものづくりの友人にかねてから誘って頂いていた掛川二の丸美術館にやっと行くことができました。
現在、特別展として「白の細密工芸ウニコール」が開催されています。