2017年5月20日土曜日

S様の大きな口枠鞄

この鞄の制作は2008年。
書類を山ほど入れて運ぶということで、鞄の幅もマチ厚もかなりあるものをフルオーダー
していただきました。以来10年間、仕事のときはほぼ毎日お使いいただいているということです。3年ほど前に持ち手の金具がすり減ったため、いちど交換をしています。
今回のメンテナンスでは、背中のコーナーパッチの糸がすり切れてなくなっているのが分かり、縫い直しをさせていただきました。
雨にもかなり当たっているようで、油切れによるヒビもできており、鞄としては、かなり過酷な条件ですが、若いS様の厳しいお仕事のパートナーとして時を過ごしてきた鞄の表情にはなんともいえない凄みを感じます。S様によると同業の方々は、鞄を買うと2年は持たないそうです。「だからこの鞄はすごい」と言っていただきましたが、つくり手としてはハラハラドキドキ。
どの鞄もそうですが、里帰りしてきた鞄には「よしよし、よく頑張ってきたぞ」という気もちで出来る限りのことをしてあげたいのが親心。
そして「さあ、気張っていってらっしゃい!」と再び送り出すのです。