イギリスのタンニン鞣しといえばoak bark(樫の木の皮) というのは知ってはいました。
でもそれは昔の話だろうと思っていたのは(少なくともこのタンナーさんでは)大きな間違いでした。この地域の鞣しとしてはRoman(ローマ時代!?)から、この鞣し工場としては150年の歴史があるそうです。
職人であり社長の説明を聞きながら(正確には分からないながら必死)案内される建物や作業場の空気はクリーンで美しく、工場からただようどこか懐かしいような独特な匂いから連想できたのは古い味噌蔵や醤油蔵でした。
「鞣し」と「発酵」は科学的にいえば全く違うものでしょうけれど、「良い生きた菌」がたくさん住んでいるのではないかと体で感じるものがありました。
昔から基本的なことはほとんど変わっていないというシンプルで目に見える工程は、人間が五感を使いながらゆっくりつちかってきたノウハウと歴史とともに、ああ、鞣しとはこういうものなんだと納得させてくれる深いものがありました。
鞣しのエキスパートであった先先代の社長はピットの中のタンニン液の良し悪しをなんと舐めて確かめていたというのもビックリはしましたが、見学を終えればなんとなく頷ける話です。
写真上
一枚づつ棒に吊り下げられ、槽に浸けられる革。
濃度の薄いタンニン槽からだんだん濃い槽に移しながらゆっくり鞣しは進む。
鞄用の革は約3ヶ月、靴底の革は約1年をかけて完成する。
写真中
靴底用に更に硬く仕上げるためのタンニン槽。
靴底用のピットには更にチェスナットの実を包む皮のタンニンが追加される。
写真下
oak bark(樫の木の皮)の山。1年近く寝かしたものを水に浸けてタンニン液は抽出される。