出来上がりです。
構造はいたって単純で、その分作業で無理をしないとまとまらない形です。
革のつやを鞄の曲面で見せたいと思って作りました。
初めてのお話にお出での時、このボックスカーフをずっと手に取られた
ままお離しにならないほどお気に召した革で、
試作をご覧頂いた時も私共の提案に喜んで賛同して頂きました。
鞄屋冥利につきるお仕事をさせていただいた鞄です。
いよいよ本作のステッチです。
ほとんどすべてのステッチは片手を鞄の中に入れたまま縫う事になります。
こんな時、手縫いのすごさを感じます。
可能性のかたまりみたいなものです。
単純に「ミシンでは縫えないところも縫う事が可能」というだけではありません。
この鞄の場合、まるっこい胴体を、縫い返しでなく実現するためには
どういうことができるだろうか、というところから出発し、
丈夫さと美しさを兼ねそろえたまとめ方を探りました。
その革のいいところ、不利なところを受け入れながら、「こういうふうにしたい」と明確な意志をもってかたちづくりに向き合うといろんなことが可能になるのです。
そして、更にすばらしく可能性を秘めた世界が広がっているのが感じられます。
機械を介さずに「手で素材を感じながら縫う」って
そういうことではないかなとおもうのです。
エッジ部がない、フラップ以外どこを見ても球面でできている。
そんな仕立ての鞄をつくらせて頂きました。
最近そういう鞄の可能性を探っています。
卵形の鞄です。
写真は2回目の試作で、全体の質感、張り感、フラップの美しく見える位置、
リボンの幅等を決めているところです。
今回は、しなやかさと張り感をあわせ持つ柔らかめのボックスカーフ。
いろいろとお見せした中でお客さまが真っ先にお選びになった革です。
蚤の市には必ずといっていいほど出かけます。
古い鞄の掘り出し物を探したり、初めて見る革の道具を見つけたり。
あたりもあればはずれもあります。
今回はこんな物を手に入れました。
ご覧のとおり平行に開いていくペンチです。
ひょっとしたら私が知らないだけで日本でも普通にあるのかもしれません。
でも色々な使い方ができそうだと思いませんか。
毎年顔を出す古い工具ばかりを揃えているおじさんがニコニコして
少しおまけして売ってくれました。
おじさんの売る道具は彼の眼鏡にかなった物ばかりと言う感じで、
どうもヤスリで丁寧に磨いて油を軽く塗ってあるようです。
使用したものならではの存在感があり、美しく堂々と置かれています。
いつも引きつけられて見入ってしまうお店です。
長らく留守にしておりましたが、ぼちぼち仕事をはじめております。
「仕入れ」半分「息抜き」半分の旅から一昨日の夜に帰ってまいりました。
今回は、南仏プロヴァンス地方の小さい村はずれに住む友人家族のもとに足をのばしました。
自然の営みと家族を大切にしながらゆっくりと営まれる彼らの小さな暮らしぶりはなんともほっこりあたたかく、豊かなものでした。
お庭のオリーブの木から収穫した実を製油所に持ち込んでできたばかりの貴重なオイルを餞別に一本いただきました。なによりいちばん嬉しいおみやげです。